5月22日、大阪を拠点とするワインショップFUJIMARU様主催・WOSA Japan協力のもと、関西初の大規模な業界向け南アフリカワイン試飲会が大阪Mitteにて開催されました。

これまでにも日本ワインやポルトガルをテーマに大きな試飲会を開催しているフジマル様ですが、南アフリカにフォーカスしたのは今回が初めて。「造り手の個性が際立つような面白い生産者が出てきて、扱うアイテム数も増えてきたので、改めて南アフリカワインを“面”でプロモーションしたい」と今回の試飲会を企画されたそう。出展インポーターは全国から集まった15社、当日は210種類以上のワインが供されました。

 


試飲会には142名が来場。

 

16階の別会場では、全日本最優秀ソムリエコンクール優勝を始め各国のコンクールで活躍するロオジェ井黒卓氏によるセミナーを2部制で開催。当初は各25名の募集でしたが、申し込み多数により、急きょ別会場を借り増席するという人気ぶりでした。

 

モデレーターはWOSA Japan高橋佳子氏。

 

「価格と品質のバリューがすさまじいのが南アフリカ。おすすめの産地を聞かれると、お世辞抜きに、挙げる産地の一つです」と井黒氏。

 

1部(テーマ:白ワイン)のセミナー提供ワイン

  1. Natte Valleij Axle Chenin Blanc 2022 (Hummingbird)
  2. Sijnn White 2018 (Mottox)
  3. Raats Eden High Density CB 2021 (Masuda)
  4. Audacia Chenin Blanc 2022: Honeybush and Rooibos Antioxidant Naturally Preserved, No Sulphur added Wines (Tealife)

 

2部(テーマ:赤ワイン)の提供ワイン

  1. NEETHLINGSHOF PINOTAGE 2021 (GSA)
  2. Mount Rozier Cape Red (Season Wine)
  3. Craven Cinsault 2022 (Raffine)
  4. Catherine Marshall Grenache 2021(Masuda)

 

 

 

単なるお勉強で終わらせない

主催側の話になりますが、今回の試飲会で驚いたことが2つ。

まずフジマルの試飲会すべてに共通することですが、出展料が無料であること。インポーターの方からも、「出展料がなかったので、交通費を負担してでも参加できた」という意見を頂きました。代表の藤丸智史氏いわく、「僕らの仕事はインポーターさんの営業のお手伝いをすること。交通費を払ってきてくれるのだから、経費負担を分担するのが当たり前」。会場費の値上がり等も踏まえ1000円の参加費を設けていますが、「我々とインポーター、お客様でそれぞれ経費負担をシェアすることで、お互いに勉強しあえれば」と話されていました。

二つ目が、フジマル様とお客様との関係性の濃さ。試飲会を単なるお勉強の場や懇親会で終わらせず、きちんと試飲商談会として機能させる営業力の高さに驚きました。そのため試飲会のご案内も、クライアントのワイン担当者の方と直接電話やライン等で連絡し、試飲会が終わった後も、1件1件発注を確認するそう。きめ細やかな対応に驚きますが、「それは捉え方によってはコミュニケーションの一環。地方の酒屋さんの役割はそこにある」と藤丸氏はこともなげに言います。

たしかに、会場を観察していると、雑談をしている人が少なく、真剣にワインを選ぶために試飲している人が多い印象。お客様の意見を聞こうと話しかけるタイミングをうかがっていたのですが、なかなか隙のある人がいない…。ようやく捕まえた方が、なんと島之内フジマル醸造所の店長・河端浩史氏でした!

せっかくなので南アフリカの魅力について伺ってみると、「まだ南アフリカワインは珍しいので、カラーが出せるというのは大きな強み」と河端氏。さらに、「味わいはもちろん、お客様に造り手のストーリーを伝えられるのがワイン屋の醍醐味。コロナでこの3、4年間厳しかったので、今後はイベント等で積極的に造り手の想いを伝えていきたい」と笑顔で語ってくれました。

 


ラ・ラングドシェン(株)のブースには、今回南アフリカから来日したDorrance Wines  Christophe Durand氏の姿も。

 

アカデミーデュヴァンで教鞭も取るワインジャーナリストの寺下光彦氏は、「きちんと探すと、ブルゴーニュのグランヴァンの味わいのものが、十分の一の価格で買える。シュナンブランの古木も、世界で南アフリカにしかない唯一無二のワインだと思います」とコメント。「南半球のラターシュ」と寺下氏が太鼓判を押すクリスタルムのキュヴェ・シネマは、試飲会後半には売り切れの人気ぶりでした。

 

 

オーセンティックなBARで働く若い男性は、南アフリカワインの印象について「コストパフォーマンスの良さ」「多様性」「ナチュラル」について指摘。「世界のワインの価格も上がってきている中で、リーズナブルで掘り出し物が多いイメージがありますね。多様性に富んでいて、クラシックなボルドーブレンドもあればナチュラルワインもある。お客様にも、“添加物が少ないワイン”とアピールもしやすい」と魅力を語ってくれました。

 

 

大阪での南アフリカワインの認知度は?

ここ数年で南アフリカの知名度も大分上がったように見えます。1999年から南アフリカを扱っている大阪の専門商社の(株)マスダ名物バイヤー三宅司氏は、「この5、6年でだいぶ認知が広がって、お客さんも増えた。昔から頑張ってきたことが、ようやく定着しつつある」と手応えを感じています。ただ、大阪のお客様は少々シビアで、東京より500~1000円ほど平均単価が下がるのだとか。「南アフリカワインはもっと上にいけると思う。そのためにも継続的にこういった試飲会を続けていきたい」。

 


「ワインの味わいも、どんどんエレガントになっている」と三宅氏(右)。

 

今では自社輸入の4割が南アフリカを占めるラフィネさんも「輸入し始めの頃は、あまり飲んだことがなくて…というお声ばかり頂きましたが、今は『よく品質が高いと聞きます』と言ってくださるお客様も増えました。少しずつ認知度は上がってきています」とコメント。

主催のフジマル様は、「それでも全体的に見れば、まだまだ認知度は低い。これを機に今後広げていければ」と話されていました。まだまだできることは多そうです。

 

後日、お会いしたインポーターさんからは、「あの試飲会の後に注文を早速頂きました!」という嬉しいご報告もちらほら頂きました。主催のフジマル様、出展インポーター様、そして足を運んでくださった皆様、ありがとうございました!

 

東京・水天宮のワインショップ「アフリカ―」も人気の(株)アンパン。自社輸入するときの判断基準は「値段、クオリティ、見た目」。お手頃でラベルが可愛いワインはよく売れるそう。

 

南アフリカ初の黒人女性醸造家ヌツィキ・ビエラ氏のワインASLINAを輸入するアリスタ木曽。

 

個性豊かなナチュール生産者を多く扱うジ・アフリカン・ブラザーズ。

 

アークセラーズ代表・佐藤正樹氏は昨年10月のWOSA Cape Wine tourに参加。現地で見染めた4社のワインを今回日本に初紹介。

 

<Aya Mizukami>