産地/ケープ・サウス・コースト

OVERVIEW

概略

1993年のWine of Origin(WO)の一部改正にともない、南アフリカワイン発祥の地、ワイン産業の中心として重要な西ケープ州を筆頭に、東ケープ州、北ケープ州、フリー・ステイト州、クワズル・ナタール州とリンポポ州という州を基準とした6つのGeographical Unitが誕生した。

Geographical Unit(州単位)

geographical-unit

Region

※現在、【Region】があるのは西ケープ州のみ

WINE GROWING AREA

産地詳細

西ケープ州/Western CapeのRegions(地域)

Cape South Coast

ケープ・サウス・コーストは南アフリカ最南端の地域。コースタル・リージョンのステレンボッシュ東部と隣接するホッテントット・ホランド山系からはじまり、最東端は2000年にブドウ木が植樹されたばかりのプレタンバーグ・ベイ地区にいたる東西500kmの産地だ。大西洋とインド洋を流れる2つの海流の影響を色濃く受ける冷涼な海洋性気候が特徴。
約2億5千年前の大陸移動でアフリカ大陸の南端に島が衝突し、山脈や急峻な丘陵地帯が形成された(ケープ・フォールド・ベルト[Cape fold belt]褶曲衝上断層帯)。沿岸部では海から数キロで標高300mとなる地区、そこに隣接する山々は標高700~1,000mに達し、昼夜の気温差が大きい冷涼な高山性気候となる。比較的新しい産地だが、非常にユニークなテロワールがあることから、近年注目を集めている。
土壌はコースタル・リージョンとほぼ同じく、花崗岩や頁岩といった深成岩や、れき岩や砂岩などの堆積岩が中心だ。これらが風化し、混ざりあった地層を形成していることも独特の個性と言える。さらにケープ・サウス・コーストの広範囲に分布するボッケフェルト頁岩(Bokkevelt shale)地層は同地域を語る上で欠かすことのできない重要な要素である。

赤ワイン用主要品種として有名なのは、
・ピノ・ノワール
・シラーズ/シラー
・カベルネ・ソーヴィニョン
・メルロー
・サンソー

白ワイン用主要品種として有名なのは、
・シャルドネ
・ソーヴィニヨン・ブラン
・リースリング
・セミヨン
・シュナン・ブラン

Elgin

年間平均気温: 15.5℃
年間降雨量 : 694.0mm
夏季降雨量 : 86.2mm
夏季最高気温: 23.8.1℃
夏季最低気温: 15.7℃
夏季日照時間: 9.2時間
※夏季の数値は12~3月の平均値
※1999年~2019のデータ
https://en.climate-data.org/africa/south-africa/western-cape-469/

エルギンはケープタウンから東に約70km、車で1時間ほど。東端はステレンボッシュ地区と隣接。古くからリンゴ産地として知られ、ホッテントット・ホランド山系に囲まれるように位置する高台の冷涼な産地で、土壌は砂岩が中心、ボッケフェルト頁岩(Bokkevelt shale)土壌が広く分布する。

エルギン・ヴァレーの収穫

1890年代に設立されたワイナリーもあるが、ワイン産地としての歴史は比較的新しい。
冷涼産地の特徴を活かした果実感とフィネスを兼ね備えたシャルドネ、リースリングやソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールとシラーズが世界的に高く評価されている。
※2010年まではオーヴァーバーグ地区の小地区であったが、2011年に地区認定を取得

Overberg

オーヴァーバーグは、エルギン地区の東側と接し、ホッテントット・ホランド山系グローンランドバーグ(バーグとは「山」の意味)からはじまり、東端はKlein River小地区と東西に160kmにも及ぶ広い地区である。以前はリンゴ畑が大半を占めていたが、1980年代からブドウ栽培を試験的に開始。近年、30kmほど内陸に入った標高500mを越える冷涼な高山性気候のElandskloof小地区や、山間の起伏・丘陵地帯を利用したKlein River小地区で栽培される良質なブドウから造られる高品質ワインが注目を集めている。

Walker Bay

2004年にオーヴァーバーグ地区から独立し、地区認定を受けたウォーカー・ベイ地区。ホエールウォッチングで有名なヘルマナスを中心に広がる南アフリカで最も冷涼な産地のひとつとしてその注目度は増すばかりだ。
西端のBot River小地区はエルギン地区の東側と接し、北西はホッテントット・ホランド山系グローンランドバーグ、南東にはバビロンストーレン自然保護区に挟まれた北東から南西のボット・リヴァーラグーンと呼ばれる河口にまで至る広い渓谷で、海洋性気候。シュナン・ブランやシラーズが有名な産地だ。土壌はやや多く粘土を含んだボッケフェルト頁岩と砂岩が中心。

ヘルマナスの北側に位置する渓谷ヘメル・アン・アールダ(Hemel-en-Aarde)は、小さい産地ながら多様なミクロクリマが存在する。海からわずか数kmの地点からはじまるヘメル・アン・アールダ・ヴァレー(Hemel-en-Aarde Valley2006年認定)、中腹にアッパー・ヘメル・アン・アールダ・ヴァレー(Upper Hemel-en-Aarde Valley2006年認定)、そこに隣接しているが、標高400mともなるヘメル・アン・アールダ・リッジ(Hemel-en-Aarde Ridge2009年認定)と3つの小地区に細分化されている。

こちらの土壌も粘土を含んだボッケフェルト頁岩地層が中心だが、各小地区でテーブルウンテン砂岩地層や花崗岩を含む地層や土壌の構成比が大きく異なる(各小地区ではさらに石灰岩やクォーツを含むなど土壌構成は非常に多彩だ)。渓谷内の構造で海からの影響も違い、標高による寒暖差もこの3つの小地区が細分化されている理由だ。高品質なピノ・ノワールとシャルドネの産地として世界から高い評価を得ている。

Cape Agulhas

年間平均気温: 16.1℃
年間降雨量 : 453.8mm
夏季降雨量 : 30.5mm
夏季最高気温: 23.5℃
夏季最低気温: 13.0℃
夏季日照時間: 10.1時間 最南端アガラス岬
※夏季の数値は12~3月の平均値
※1999年~2019のデータ

ケープ・アガラスは、大西洋とインド洋が交わる地として名高いアフリカ大陸最南端に位置するアガラス岬の名前を冠する極めて冷涼な海洋性気候の地区。非常に強く冷たい風が吹くため、沿岸部を避け、20kmほど内陸にElim小地区がある。コーヒークリップ([Koffieklip]コーヒー豆のような容姿と色の石が多い風化した頁岩質土壌)と呼ばれる鉄分が豊富に含まれる土壌や、風化により砂利化した堆積岩が主で、粘板岩や花崗岩、クォーツなども含む世界で最も多様な土壌のひとつ。ソーヴィニヨン・ブランをはじめ、セミヨンやシラーズに特徴ある個性を与えている。Elim小地区は冷涼な産地としてのポテンシャルは高く、将来を有望視されている。

Swellendam

スワレンダムはオーヴァーバーグ地区の東側に位置する。内陸部のStormsvlei小地区とBuffeljags小地区は温暖な地中海性気候。2004年にローヌ系品種やポルトガル系品種が植樹されたことで 2010年の収穫から小地区となったMalgasは、海から15kmほどの年間降雨量約350mm、石と砂利ばかりのボッケフェルト頁岩土壌でブッシュ・ヴァインに特化した産地として今後が期待されている。

Lower Duivenhoks River

Malgas小地区から東へ約20km。ダイヘンホック川の河口から川の両岸に広がるロワー・ダイヘンホック・リヴァーは、2018年に地区となってまもないが、近隣地区の優良な生産者たちがこの産地のブドウを買い付けている。冷涼な海洋性気候が育むシャルドネの産地として注目される。

Plettenberg Bay

ケープ・サウス・コースト地域最東端プレタンバーグ・ベイ地区は2000年からブドウ栽培が始まり、名前の由来プレタンバーグ湾に沿った全長57kmの海洋性気候の産地だ。冷涼な気候を好むシャルドネやピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブランで定評がある。地の理を活かし、伝統製法のスパークリングワイン「キャップ・クラシック(MCC[Méthode Cap Classique])」を生産するワイナリーが多く、高く評価されはじめている。

朝日を浴びるプレタンバーグ・ベイにあるブドウ畑

この他に、地区に属さないHerbertsdale、NapierとStill Bay Eastの3つの小地区がある。