歴史 / 創世期から20世紀

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南アフリカワインの幕開け

創成期から20世紀

人類発祥の地アフリカ大陸。その南端に位置する喜望峰(Cape of Good Hope)に、西洋人として初めてポルトガル人バルトロメウ・ディアスが到達したのは1488年のこと。そこから約10年後、ヴァスコ・ダ・ガマがヨーロッパとインドを直接結ぶ交易路を開拓し、大航海時代が幕を開けた。

ヨーロッパの列強諸国が次々と東洋へ進出する中、オランダ東インド会社はこの航路の補給基地を求め、1652年に現在のケープタウンを寄港地に選んだ。当時、司令官としてケープタウンに入ったヤン・ファン・リーベック(Jan van Riebeeck)が初代総督となる。その後、開拓・開墾を進める中、1655年にフランスやスペイン、ヨーロッパ諸国から持ち込んだブドウ木を農園に植樹。「1959年にケープで初めてワインが造られた」と彼が記録を残している。

〜Today, praise be to God, wine was made for the first time from the Cape grapes〜
「今日、神に捧げる、ケープのブドウから最初のワインが造られた」
by Jan van Riebeeck

リーベックはこの成功を機に、他の作物と同様にブドウ木の植樹範囲を広げ、テーブルマウンテンの東側に位置するRoscheuvel(現在のワインバーグはビショップスコート)に、大規模なブドウ畑を開墾した。その後、リーベックの成功をブドウ栽培学とワイン醸造学に長けた第10代ケープ総督のサイモン・ファン・デル・ステル(Simon van der Stel)が受け継ぎ、この地をコンスタンシアと名付けた。

そして1671年、ユグノー派初の亡命者(Francois Viljon)がフランスからケープに入った。1685年フランスでナントの勅令が廃止され、宗教迫害から逃れるためにユグノー派の人々が続々と入植。これがきっかけとなり、ブドウ栽培・ワイン醸造技術が飛躍的に向上し、定着していった。

1702年には「神聖で魅惑的な味のワイン」と称される至極の甘口ワイン (ヴァン・ド・コンスタンス [Vin de Constance])が造られるようになり、1726年にはヨーロッパ、続いてアメリカにも出荷され、王侯貴族の間で絶大な人気を誇るまでになった。

バッキンガム宮殿やベルサイユ宮殿(フランスのルイ16世やマリー・アントワネットが親しんでいたという記録も残されている)はもちろんのこと、アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントン、1800年代にはナポレオンやシャルル・ボードレールにいたるまで大陸を、時代を超えて愛されるワインとなった。

当時の主流は、甘口ワインであったことも幸いし、ワインの銘醸地として世界にケープワインという名が知られるようになった。

繁栄を見せる一方で、ケープワイン産業の18世紀は、深刻なオーク樽不足や輸送時の品質保持といった課題に直面したり、ヨーロッパ各国のブドウ品種や醸造技術を取り入れたりと、ケープを象徴するブドウ品種、ワイン醸造を模索する時代でもあった。

さらに18世紀後期から19世紀初期にかけて、イギリスとフランスの紛争によって一時的にイギリス領となったり、オランダ(バタヴィア共和国)に返還されたりと、時代に翻弄された。1806年、ナポレオン戦争が勃発し、再びケープを巻き込む紛争に発展。皮肉なことに、紛争によってケープワインの需要が飛躍的に伸びたことも事実だ。

45年間でブドウ木の数が1,300万本から5,500万本に増え、ワイン生産量は50万ℓから450万ℓに激増。

だが、1861年の戦争終焉とともに需要が激減し、ケープワイン産業は大打撃を受けた。さらに1880年代後半には、ヨーロッパ同様にフィロキセラ(※1)によってブドウ畑が甚大な害を被るという不運が重なった。

追い打ちをかけるように、南アフリカ戦争(※2)によって45万とも言われるイギリス軍人が同国に派遣され、時代は混乱を増し、ケープワインとブランデー市場もその被害に晒された。

戦争によって需要も創出されていたという事実もあるが、市場の混乱を招いた戦争の終焉、そこにフィロキセラ被害からブドウ畑が再建されたことが災いとなり、ワインの生産過多となり市場は完全に飽和状態となった。1907年にはワイン価格が1樽(約578ℓ)あたり3£を下回り、ワイン生産者やブドウ栽培農家は窮地に追いやられていった。

※1 phylloxera(ブドウネアブラムシ[学名はDaktulosphaira vitifoliae])ブドウ樹の根や葉に寄生し、やがて枯死に至らせる

※2イギリス帝国主義の対外政策がきっかけとなり始まった第一次ボーア戦争1880〜81年と第二次ボーア戦争1899〜1902年後に終結