2026年4月20日、日本ソムリエ協会本部にて「WOSA Sommelier Symposium 2026」の日本代表を決める選考会が開催されました。
本選考会は、南アフリカワインの最前線を知り、その魅力を日本へ伝えていただく重要なアンバサダーを選出するものです。当日は、JSA副会長の森覚ソムリエ、そしてWOSAのアジアマーケットマネージャーであるMarcus Fordが審査員を務めました。
本日は、その緊張感と熱気に包まれた一日の様子をレポートいたします。
■WOSA Sommelier Symposiumとは
「WOSA Sommelier Symposium」は、世界中のトップソムリエたちを南アフリカに招聘し、現地で開催される国際的なプログラムです。選ばれた代表ソムリエは、今年9月に南アフリカのケープ地方を訪問します。数日間にわたる産地訪問やトップ生産者たちとのマスタークラスを通じて、南アフリカワインの歴史、テロワール、そして最新のトレンドについての見識を深めていただきます。
難関を突破した4名のファイナリスト
一次試験のエッセイ課題を見事にクリアし、本選へ駒を進めたのは、以下の4名の実力派ソムリエの皆様です。(順不同)
- 井出 智也 氏(エノテカ)
- 松永 文吾 氏(セラードア青山)
- 白倉 大誠 氏(マンダリンオリエンタル東京)
- 山本 麻衣花 氏(マンダリンオリエンタル東京)


■審査内容
審査は、筆記試験と面接試験の2部構成で行われました(英語)。
筆記試験(Written Part)
約50アイテムに及ぶ南アフリカワインのリストから、12〜15箇所の誤りを見つけ出して修正する課題と、森覚ソムリエ考案の「春の和食コース」に対してリストから最適なワインを選び、ペアリングの理由を説明する実践的なテストが行われました。

面接試験(Interview Part)
スタイルや価格帯の異なる5種類のワインから2種を選び、その選択理由をプレゼンテーションする課題(約15分間)、そしてケープ訪問への志望動機と、帰国後に日本のマーケットでどう貢献できるかを語る課題が行われました。

5種類のワイン
・Lievland(リーヴランド) – Old Vine Chenin Blanc 2025
・David & Nadia(デイビット&ナディア) – Aristargos 2023
・Kleine Zalze(クライン・ザルゼ) – Vineyard Selection Pinotage 2020
・Stellenrust(ステレンラスト) – Old Bush Vine Cinsault 2023
・Aslina(アスリナ) – Cabernet Sauvignon 2018

各ファイナリストのプレゼンテーションのハイライト
- 井出さんは、デイビット&ナディアとステレンラストを選出。昨年12月にご自身で現地のワイナリーを15軒ほど訪問された経験を活かし、スワートランドのOVP(Old Vine Project)や現地の植物群「フィンボス」についても言及。ライター、エデュケーター、インポーター・小売という3つの具体的な視点から、日本での認知度向上(南アメリカとの混同をなくす等)への貢献ビジョンを語られました。
- 山本さんは、迷いなくスピーディーにアスリナとデイビット&ナディアを選出。女性醸造家という切り口からワイン造りのこだわりやSIP(Swartland Independent Producers)などの背景を説明し、若い世代の価値観や、女性シェフとのコラボレーション、アフタヌーンティーでの提案など、独自の視点が光りました。
- 松永さんは、デイビット&ナディアとクライン・ザルゼを選出。OVPを創設したロサ・クルーガー氏の功績や、ピノタージュ誕生の歴史的背景を丁寧に解説。さらに、価格高騰が続くブルゴーニュやシャンパーニュなどの代替として、コストパフォーマンスに優れた南アフリカ産ワインのプロモートに勝機があるという、現場ならではのリアルな分析を提示されました。
- 白倉さんは、リーヴランドとクライン・ザルゼを選出。勤務先のマンダリンオリエンタルの具体的なレストランを想定した、実務に即したペアリングを提案。実際に開催した南アフリカワインのイベントでお客様がいかに喜ばれたかという経験に基づくアピールが印象的でした。
■審査を終えて
長時間の厳しい審査を終え、張り詰めていた緊張から解放された皆様からは、安堵と悔しさが入り交じるリアルな感想が聞かれました。
「まさか面接試験があるとは思っていなかったので驚きました。でもサービス実技ではなくてよかった……」と胸をなでおろす井出さん。「面接でのQuestion 1の15分間のプレゼンは長く感じました」と振り返る山本さん。白倉さんは「緊張というより、自分の準備不足を痛感しました」と肩を落とされていましたが、その悔しさをバネにした今後の飛躍に大きな期待が寄せられます。
また、筆記試験の間違い探しについては全員が口を揃えて「難しかった」とコメント。多彩なスタイルや品種、聞いたことのない造り手も多く含まれていたリストは、実は現地のケープタウンにあるレストランの実際のワインリストであったことが後ほど明かされました。

■結果発表と審査員総評
審査終了後、場所をフレンチビストロ「Art Fusion by L’écrin(アートフュージョン バイ レカン)」に移してランチタイムへ。少しぴりりとした緊張感の残る空気の中、審査結果が発表されました。
非常にハイレベルな戦いを制し、見事日本代表に選ばれたのは、セラードア青山の松永 文吾さん。

ご本人は「選ばれるとは全く思っていなかった」と驚きを隠せないご様子でした。深夜まで及ぶレストラン勤務と、小さなお子様の育児の両立で睡眠時間がわずか4〜5時間という多忙な日々の中、日中の限られた時間を捻出して勉強を続けられた努力が実を結びました。

審査員の森ソムリエからは、「ソムリエとして料理からマーケットまで幅広く勉強することは当然だが、最終的に一番大切なのは『この人に南アフリカワインを売ってほしい』と思わせる人柄。ぜひ今後もその人柄を磨き続けてほしい」と温かいアドバイスが贈られました。
また、WOSAアジアマーケットマネージャーのMarcus Fordからは「日本のファイナリストのレベルは非常に高く、スーパープロフェッショナルだった」、WOSA Japanプロジェクトマネージャーの高橋佳子からは「日本のトップソムリエが応募してくれたことを誇りに思う。他国のソムリエにも良い刺激になるはず」との総評がありました。
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結果発表後は、東京藝術大学出身のアーティストによる壁画アートが印象的な空間で、Art Fusion by L’écrinの素晴らしいお料理とワインを楽しむ時間となりました。





途中、レカングループ総支配人の近藤佑哉ソムリエからブラインドテイスティングのサプライズ出題に、ふたたび真剣な表情に戻るファイナリストたち……。
正解は南アフリカワインの至宝「Sadie Family Wines(サディ・ファミリー)」の最高峰コルメラ!
南アフリカワインの高い熟成ポテンシャルを全員で分かち合う素晴らしいひとときとなりました。

本日のランチで供されたワイン

■松永さんの今後の抱負
今後のプロモーションについて、松永さんは次のように語ってくれました。
「南アフリカワインは国際品種も多く、『知っているようで、実はまだ深く知られていない産地』だと感じています。認知度はあるものの、実際にワインを選ぶ際の選択肢に入ってくるまでにはまだギャップがある。そのギャップを埋めるためのきっかけを作っていきたいです。個人的に一番好きな産地はスワートランドのシュナン・ブラン。言葉にするのは難しいですが、樽に頼らず、品種や土地の個性が洗練された形で表現されているワインが多いところに惹かれています」

■会場のご紹介:Art Fusion by L’écrin
今回、素晴らしい空間をご提供いただいた「Art Fusion by L’écrin」は、カジュアルに本格的なフレンチを楽しめるレストランであり、2026年1月にオープンしたばかりのワインショップ「リカーショップLE」も併設されています。

こちらのショップの最大の特徴は、ワインが「インポーター(輸入元)ごと」に陳列されていること。これは「日本のインポーターの個性の素晴らしさを伝えたい」という近藤さんと店長の石井弘一郎さんの想いによるものです。価格帯も5,000円前後をコアレンジとしつつ、ニッチなワインから日本酒まで「つながり」を重視したセレクトが並びます。
そしてレカンといえば、そのレストランのワインリストは垂涎もの。基本的には、飲み頃になってからワインをリリースするスタイルをとっており、南アフリカワインもSadieやPaul Cluver、Capensisなどメジャーで質の高いものが揃っています。
また、ショップで購入したワインは無料でレストランへBYO(持ち込み)が可能。隣のレストランのメニューをテイクアウトしてワインショップで角打ち感覚で楽しむこともできるという、ワインラヴァーにはたまらない空間です。

Art Fusion by L’écrin
https://lecringinza.co.jp/theartsfusion/
改めまして、松永文吾さん、日本代表選出おめでとうございます。そしてファイナリストの皆様、素晴らしい挑戦をありがとうございました。
皆様、今後の松永さんのご活躍と、南アフリカワインのさらなる広がりにぜひご期待ください。
9月に開催される南アフリカ現地でのシンポジウムの様子も、お楽しみに!
<Aya Mizukami>

